ベビー(赤ちゃん)
2022.06.14
【医師監修】新生児(生後0~2か月)に多い「乳児湿疹(乳児脂漏性皮膚炎)」って?
ベビーお役立ちコラム【【医師監修】新生児(生後0~2か月)に多い「乳児湿疹(乳児脂漏性皮膚炎)」って?】ナチュラルサイエンスのfor Mama & Kids Smileでは、ベビーやキッズ・マタニティ・美容や健康に関する役立つコラムを皆さまにお届けしています。
初めての育児に奮闘していたら、いつの間にか赤ちゃんのおでこや頭にブツブツが!そんな事態に慌てるママやパパも多いのではないでしょうか?
そこで今回は、赤ちゃんの乳児湿疹の中でも、特に新生児(生後0~生後2か月頃)に多発する「乳児脂漏性皮膚炎」ついて、皮膚科・アレルギー科の専門医である澄川靖之先生に教えていただきました。
医療法人社団 北燈会 すみかわ皮膚科アレルギークリニック理事長・院長
日本皮膚科学会認定専門医 日本アレルギー学会認定専門医
日本アレルギー学会認定指導医 がん治療認定医
目次
「乳児湿疹」とは赤ちゃんのブツブツトラブルの総称です
そもそもですが、「乳児湿疹」という病名はありません。乳児湿疹とは、1歳くらいまでの赤ちゃんの肌に起こる湿疹(ブツブツ)の総称です。
乳児湿疹に含まれる主な肌トラブル
●乳児脂漏性皮膚炎
新生児~生後2か月くらいまでにみられる、皮脂分泌が盛んな頭皮やおでこにできやすいブツブツです。
●皮脂欠乏性皮膚炎
肌が乾燥して、バリア機能が乱れることで起こるブツブツトラブルです。肌が未熟で水分も脂分の少ない赤ちゃんの肌は、この湿疹が起こりやすい状態です。
●アトピー性皮膚炎
かゆみを伴った湿疹が出たりよくなったりを繰り返す病気です。
●皮膚カンジダ症
カンジダというカビが原因の皮膚炎です。赤ちゃんだとおむつの中(おまたや肛門周辺)にできることが多いです。
●接触皮膚炎
いわゆる「かぶれ」。刺激に触れたときに起こるアレルギー反応です。
「乳児湿疹」と一言で言っても、乾燥、皮脂、カビ、アレルギーの原因物質など、さまざまな原因があります。予防方法も原因によって異なるので注意しましょう。
例えば、特に経験する子が多い「乳児脂漏性皮膚炎」と「皮脂欠乏性皮膚炎」ですが、前者の予防は洗浄に重点が置かれ、後者の場合は保湿に重点が置かれます。
今回は、皮脂が原因の「乳児脂漏性皮膚炎」についてお伝えします。
「乳児脂漏性皮膚炎」は「、新生児期に多いブツブツ肌トラブル
赤ちゃんの肌は、本来ならまだおなかの中で育つべきくらい未熟な状態です。全体的にうるおい(水分)も皮脂も少なく乾燥した状態です。
しかし、頭~おでこだけは別。この部分だけは、皮脂が過剰に分泌されます。これは、お母さんからもらったホルモンの影響ともいわれており、新生児(~生後2か月くらいまで)に特によく見られます。
顔のほかの部位や体は非常に乾燥しているため、乾燥が原因の乳児湿疹も起こりやすいのですが、頭~おでこの過剰な皮脂によって肌が炎症を起こしたものが、「乳児脂漏性皮膚炎」とよばれる乳児湿疹です。
「過剰な皮脂」をきちんと落とさないとブツブツ・におい・かさぶたの原因に
「乳児脂漏性皮膚炎」を起こした肌によく見られる特徴
●頭皮~おでこにかけてブツブツがでている
●新生児期(~生後2か月頃まで)にあらわれる
●黄色いカサブタのようなもの・フケが目立つ
●さわるとベタベタしている
●あぶらっぽい臭いがする
部分的に過剰に分泌される皮脂汚れを十分に落としきれないと、湿疹だけでなくニオイやかさぶた上の脂のかたまりなどさまざまな肌トラブルを引き起こします。予防には、余分な皮脂を1日1回きれいに落とすことが大切です。
低月齢の赤ちゃんのお母さんから、よく、「赤ちゃんの頭にフケが出ました!頭も保湿しているのによくなりません」という声が聞かれます。
汚れ(過剰な皮脂)をきちんと落とさないままに保湿を重ねてしまうと、かえって湿疹を悪化させてしまうことがありますので注意しましょう。
「乳児脂漏性皮膚炎」の予防には、まず“洗い方”の見直しを
皮脂が原因のトラブルは、まずは1日1回のお風呂で余分な皮脂をすっきり落としてあげることが必要です。
とは言え、石鹸など脱脂力の強いもの、肌に洗浄成分が残りやすいもので洗ってしまうと、デリケートな肌の刺激となり、かえって肌荒れをひどくしてしまう場合もあります。洗浄料は、赤ちゃん(新生児)から使える安全性が確認されていて、未熟な赤ちゃんの肌の刺激とならないものを選びましょう。
また、赤ちゃんからベタつきがちな頭皮・絡まりやすい髪のことも考えられた頭専用の赤ちゃん用ヘアシャンプーを選ぶといいでしょう。赤ちゃんも、毛量に関わらず、頭にはヘアシャンプーを使うことをおすすめします。
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【動画】赤ちゃんの頭の「洗い方」はこちらをチェック!
【脂漏性皮膚炎の対策】洗い方のポイント
1.赤ちゃん用ヘアシャンプーを使います
ベタつきが気になるときは、おでこまでヘアシャンプーで洗いましょう
2.指の腹を使ってゴシゴシ洗いましょう
指の腹を使って、頭皮の汚れを落としましょう。頭は赤ちゃんの部位で唯一こすってもいい部分です。(ほかの部位はたっぷりの泡を転がすようにして洗いましょう。)
注意ポイント
頭に黄色い脂のかたまりがある場合も、爪を立てて無理に取ろうとするのはNGです。デリケート肌を傷つける原因になります。指の腹を使って洗いましょう。
3.大泉門(頭頂部のぺこぺこした部分)も怖がらず洗います
強く押さなければ、怖がる必要はありません。ここも皮脂が多い部分ですので、泡できれいにしましょう。
4.すすぎは水流の弱いシャワーで
清潔な水で、すすぎ残しがないように流します。耳をおさえる必要はありません(指を離すときの圧力で、鼓膜を痛めることがあります)。
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キレイにした後は、おでこは保湿乳液でケアを
赤ちゃんの肌をキレイにした後は、赤ちゃん用保湿乳液でケアするのが基本です。脂っぽいところも、保湿ケアでうるおい(水分)と脂分のバランスを整えてあげることで、過剰な皮脂分泌を抑えることにつながります。乳液などで保湿をしましょう。
ただし、大人でも肌質は人それぞれのように、赤ちゃんも皮脂の分泌量には個人差があります。肌の状態をみながらケアを調整したり、専門家に相談することが大切です。
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【参考動画】赤ちゃんの保湿方法は、こちらをチェック!
赤ちゃんの保湿ケアには、「ワセリン」だけでなく「乳液・クリーム」を
赤ちゃんの肌トラブルでお医者さんにかかると、よくワセリンが処方されます。ワセリンは油ですので、肌を保護する作用はありますが、うるおいを与える作用が弱いです。
また、過剰な皮脂によってできた一時的なかたまりを浮かすために使うのは効果的ですが、保湿された状態を保つという意味では不十分です。
すこやかな肌状態を保つためには、毎日の保湿ケアは乳液やクリームなど、水分と油分をバランスよく補えるものがおすすめです。そちらの方がベタつきも少なくぬり心地もいいので、赤ちゃんも親御さんも続けやすいのです。さらに乾燥が強い場合は乳液・クリームを塗った上にワセリンを塗ってカバーするとよいでしょう。
脂のかたまりがついている時は、低刺激クレンジングもおすすめ
ヘアシャンプーを使ってもベタつきが気になる、黄色い脂のかたまりができているようなお子さまは、低刺激のクレンジングを使用するのもおすすめです。
ポイントは、デリケートな肌を刺激しないように、脂を浮かして落とすこと。赤ちゃんにも使える無香料・無着色・弱酸性の低刺激クレンジングを使って、余分な皮脂を落としてあげましょう。
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クレンジングミルク
うるおい成分たっぷりの、敏感乾燥肌用クレンジング。とことん肌にやさしいのに、ウォータープルーフのマスカラもきちんとオフ。ミルククレンジング成分がメイクや皮脂、汚れを浮き上がらせてきちんと落とし、洗いあがりはしっとりやわらか肌に。濡れた手でも使えます。
【使い方】乾いた頭皮と額にクレンジングミルクをつけてやさしくなじませ、シャワーで流しましょう。そのあとに、ベビーヘアシャンプーで洗浄をします。
赤ちゃんのブツブツなどのトラブルは、放置せずに早めに病院へ
今回ご紹介した「乳児脂漏性皮膚炎」以外にも、「乳児湿疹」にはさまざまなトラブルが含まれ、その原因も対策も異なります。
一見同じ湿疹に見えても、その病変によって治療法や使用するお薬も違います、例えば、アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎などの治療に使われるステロイド薬を皮膚カンジダ症に使えば、かえって症状を悪化させてしまいます。また、同じステロイド薬を使うような肌病変でも、炎症の度合いや使い部位によって薬の強さ(種類)が異なります。
「たかが湿疹」と放置したり、前にもらった薬を自己判断でつかったりせず、まずは病院に行って正しい診療を受けましょう。
おわりに
今回は、新生児期に多い乳児湿疹「脂漏性皮膚炎」について、澄川先生に教えていただきました。この時期のブツブツは、ほとんどの赤ちゃんが経験すると言っても過言ではありません。まずは肌の特徴を知って、月齢・部位に合ったケア方法を取り入れてみましょう。
堀向健太,青鹿ユウ『マンガでわかる!子どものアトピー性皮膚炎のケア』.内外出版社.2020
杉山剛『これが最新 赤ちゃんのスキンケアはよくわかる本』.主婦の友社.2016
佐々木りか子『赤ちゃんとキッズの肌育&スキンケア』.主婦の友社.2021
佐々木りか子『よくみる子供の皮膚疾患-診療のポイント&保護者へのアドバイス』.医学書院.2018
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