2024.04.11
ナチュラルサイエンスを含む共同研究チームによる乳児の早期のスキンケア介入によるアトピー性皮膚炎・食物アレルギーの発症率軽減の研究結果が世界的な論文誌『Allergy』に掲載
化粧品や医薬部外品の製造・販売を行う株式会社ナチュラルサイエンス(本社:東京都中央区、代表取締役社長:小松令以子)は、大阪大学(大阪府吹田市、皮膚科学)、いちかわクリニック(福島県福島市産科、小児科)、ミシガン大学(アメリカ合衆国ミシガン州、病理学)、大阪大学免疫学フロンティア研究センター(大阪府吹田市)、秋田大学大学院(秋田県秋田市、医学系研究科皮膚科学・形成外科学講座)、名古屋大学大学院(愛知県名古屋市、医学系研究科皮膚科学)、千葉大学真菌医学研究センター(千葉県千葉市)、千葉大学医学部附属病院(千葉県千葉市、小児科)、千葉大学予防医学センター(千葉県千葉市)との共同研究チームが発表した論文が、世界的な論文誌『Allergy』に掲載されたことをお知らせいたします。
今回、共同研究チームが発表した論文では、1歳でアトピー性皮膚炎を発症した乳児が、生後3日目という早期に皮膚の異常を示すことを報告。これに対して、スキンケアによって軽減される可能性があること、食物抗原感作には生後1ヶ月から6ヶ月にかけて、皮膚マイクロバイオーム多様性の有意な減少が関連していたことが研究結果により導かれました。本研究には弊社が販売している低刺激スキンケア「ママ&キッズ」のベビーラインが使用されています。
※皮膚マイクロバイオーム:皮膚に常在する微生物の集団を指す用語、私たちの皮膚の防御に大きな役割を果たし、体と環境の間の交換を調節する
共同研究の背景
日本では、出生早期からの保湿などによるスキンケア介入が、アトピー性皮膚炎の予防に効果があるとする研究結果が報告されています。しかし、他の研究や海外では、スキンケア介入による予防効果が得られないという報告や、食物アレルギーの増加との関連が示唆される報告もあり、出生時からのスキンケア介入の有用性に疑問が投げかけられていました。また、乳児期の皮膚バリア機能の異常とアレルゲン感作の関係について、特定のスキンケア製品や方法、使用量に焦点を当てた定量的かつ客観的な評価や解析が不足していると指摘されています。
以上の理由から、研究チームはこの問題に焦点を当て、乳児期の皮膚バリア機能の異常とアレルゲン感作の関係について調査を行いました。この研究の目的は、洗浄と保湿を含めたスキンケア*と保湿剤の使用量や方法が、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーの発症にどのような影響を与えるかを明らかにすることであり、より効果的な予防策の提案に寄与することを目指しています。
*スキンケア方法参考 山本一哉:かかりつけ医のためのこどものアトピー性皮膚炎診療&スキンケア指導 金原出版株式会社,東京,2017,113-121
世界的な論文誌『Allergy』:掲載概要
・論文掲載誌
Allergy(First published: 09 March 2024)
・論文タイトル
Neonatal skin dysbiosis to infantile atopic dermatitis: Mitigating effects of skin care
・著者(敬称略)
大阪大学皮膚科学 青山礼華、杉平 貴史、中川誠太郎、伊藤 朋香、藤本 学
いちかわクリニック 市川陽子、市川文隆
ミシガン大学病理学 猪原直弘、Gabriel Núñez
大阪大学免疫学フロンティア研究センター 山﨑 由里子、松岡悠美
秋田大学大学院医学系研究科皮膚科学・形成外科学講座 河野通浩
名古屋大学大学院医学系研究科皮膚科学 秋山真志
千葉大学真菌医学研究センター 高橋弘喜、高屋明子
千葉大学医学部附属病院小児科 中野泰至
株式会社ナチュラルサイエンス 田中聖子、小谷野豊
千葉大学予防医学センター 下条直樹
研究概要
これまでの研究で、アトピー性皮膚炎(AD)患者は、病変部の皮膚に黄色ブドウ球菌を保有し、疾患の再燃と進行に関連するディスバイオシスを引き起こしていると報告されています。このことを明らかにするために、本研究において、縦断的マイクロバイオーム解析を行いました。本研究では、生後早期からスキンケアを実施した乳児177名を対象としました。
研究結果
1歳の時点で、13人の乳児(7.3%)がADを発症しました。食物アレルギー(FA)の乳児3人(1.7%)が卵白(EW)アレルギーと診断され、そのうちの1人はADと診断されていました。さらに、ADでもFAでもない61人の乳児(34.5%)がEWに感作されていました。健常群と比較して、EW感作群は1歳時の保湿剤の使用量および血清総IgE値が有意に高く、対照的に、AD群の乳児は健常児群よりも保湿剤の使用量が相対的に少ないという結果となりました。分娩方法、栄養方法、親のアレルギー歴、FLG変異、出生季節、および経表皮水分蒸散量(TEWL)での有病率は、両群間で同程度でした。これは、スキンケアの効果により、経表皮水分蒸散が最小限に抑えられている可能性が示唆されます。
【皮膚マイクロバイオームの検証】
私たちの皮膚の防御に大きな役割を果たし、体と環境の間の交換を調節する「皮膚マイクロバイオーム」に関しては、健常群とAD群間の多様性は、すべての観察時期で同様でした。我々が以前に行った非介入コホート研究とは異なり、生後6ヵ月における黄色ブドウ球菌の存在量は、ADの発症にかかわらず、1ヵ月と比較して有意に減少していました。
出生後3日目におけるStreptococcusとPrevotella OTUの増加およびCutibacterium OTU(Cutibacterium acnes)の減少は、1歳時のAD発症と関連していました。スピアマンの順位相関係数により、保湿剤の使用量(4か月, 6か月)と新生児皮膚におけるStreptococcus OTUの存在量との間に負の相関があることが明らかになりました。対照的に、新生児皮膚におけるC. acnesの存在比率は、保湿剤の使用総量(1歳まで)と正の相関を示し、1歳時のTEWLレベルとは負の相関を示しました。C. acnesと保湿剤の使用総量との相関は、この細菌が保湿剤に含まれる必須脂質(コレステロールとセラミド)を栄養分として増殖する可能性を示唆しています。これらの結果は、新生児の皮膚異常が1歳までにADのリスクを高めることを示唆しており、これはスキンケアによって軽減される可能性があります。
また、健常群と卵白感作群のマイクロバイオームも比較解析した結果、1歳時にADを認めない卵白感作の乳児では、生後1ヶ月から6ヶ月にかけて、皮膚マイクロバイオームのシャノン多様性が有意に減少していました。生後3日目の乳児の皮膚では、3つのOTU(例:Pasteurellaceae、Neisseria、Enhydrobacter)と4つの属(例:Corynebacterium、Pasteurellaceae、Neiserria、Enhydrobacter)が、LDAによって健常群と比較して卵白感作群で比較的高い存在比を示しました(図2C)。しかし、ADの結果とは異なり、卵白感作の発症に関連する細菌はいずれの観察時期においても保湿剤の使用量とは関連していませんでした。
まとめ/考察
私たちが過去に実施した日本の乳児コホート研究によると、1歳前後のADとFAの発症率はそれぞれ15.3%~24.6%、10.9%~12.1%であり、食物アレルゲン感作は乳児の約40%に認められました。しかし興味深いことに、今回のスキンケア介入研究では、食物アレルゲン感作の発症率は同程度であったものの、ADとFAの発症率はかなり低い結果となりました。
結論として、我々は、1歳でADを発症した乳児が、生後3日目という早い時期に皮膚マイクロバイオームの異常を示すことを発見しました。本研究の結果は、乳児期のADおよびADに関連するFAに対する保湿剤の予防効果の可能性を示唆していますが、全被験者が介入を受けており、盲検化が行われていないことが本研究の限界であり、ADおよびFA予防における保湿剤に基づく介入の有効性を検証するためには、今後のランダム化試験が必要であると言えます。
・論文掲載サイトhttps://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/all.16095
(論文和訳)https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/all.16095
参考)弊社における、類似の研究結果発表
2022年11月12、13日に開催された第59回日本小児アレルギー学会学術大会において、下記の研究が優秀演題賞を受賞。
▼出生早期から1歳まで「ママ&キッズ」製品を指導したスキンケア方法のもと使用した乳児において、卵白に感作している児も含めアトピー性皮膚炎・食物アレルギーの発症率は極めて少ないという研究結果を発表
会社概要
低刺激スキンケアメーカーのナチュラルサイエンスは、30年にわたり世界一デリケートな赤ちゃんの肌を研究し続けてまいりました。そんなデリケートな赤ちゃんから敏感肌の大人まで一緒に使える低刺激のスキンケアを中⼼に、肌本来の⼒を引き出すスキンケアやサプリメントなどの研究開発・販売を⾏っています。特に敏感肌向けブランド「ママ&キッズ」は⽪膚科医・⼩児科医・産婦⼈科医・アレルギー専門医の協⼒のもと開発を⾏い、低刺激性を実現。またその効果を確かめるため、⼤学病院や⽪膚科での臨床テストを実施するなど、徹底的に品質をチェックしています。